“そこにしかなもの”を求めて

 

先日、以前に本誌で取材させていただいたシェフの新しいお店に伺う機会がありました。

現在は半蔵門の地から離れ、東京郊外にある一軒家レストランの総料理長として腕を振るわれています。

「ローカルファースト」をコンセプトにおくこちらのお店では、近隣の農家で採れた野菜や伊豆の新鮮な魚など、

地元の食材を使った地産地消の料理を楽しむことができます。

メニューはお任せコースのみ。

決まったスタート時間に合わせてお客さんが来店し、10人がけの一枚板のテーブルに運ばれる大皿料理を、みんなで取り分けるスタイルです。

この「シェア料理」スタイルの醍醐味は、料理はもちろん同じテーブルを囲む初対面の人との会話を楽しみ、体験を分かち合うこと。

それはそうと、どうしてこのような斬新で変わったお店を、あえて郊外に作ったのだろう。

興味の赴くままに尋ねてみました。

「雑誌にも頻繁に取り上げられますし、表参道や銀座にあっても不思議でないようなお店なのに」

するとシェフからは次のような答えが返ってきました。

「この地域に、人の流れをつくりたい」

それはまさしく食の未来への提案とも言えるものでした。

良いお店は、足をのばしてでも行きたいと思うものです。

遠方からも人が訪れ、人同士や人と自然がつながる暮らしを実現する場所をつくること。

それがこのレストランの目指すところでした。

便利な世の中であるからこそ、そこにしかないもの、そこでしかできない体験に目を向けてみよう。

そして旅をするように食を楽しもう。

心とお腹をいっぱいに満たし、ふとそんなことを思うのでした。

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