一人ひとりに寄り添うおもてなしを!市ヶ谷の地元密着系ビストロ
一人ひとりに寄り添うおもてなしを!市ヶ谷の地元密着系ビストロ
めがね食堂 店長 山口 修治さん
♢ユニークな店名ですよね
お客様には「店長が眼鏡をかけているから、めがね食堂なんだろうな」と思われることが多いですけれど、実は違います(笑)めがね食堂という名前になる前は、別の店名で今のオーナーがワインバーをやっていました。その後、新しい業態を始めるから店名も変えようとなった時に、当時の常連のお客様が「オーナーが眼鏡をかけているんだから、めがね食堂でいいじゃん」とおっしゃって、それがそのまま店名になりました。店名が変わったのは5年ほど前で、私がここで働き始めたのは、コロナの真っ只中、去年の4月からです。もう1年経ちました。
♢山口さんは、それまではどうされていたのですか?
めがね食堂に来るまでは、飲食関係の企業で働いていました。ジャンルは創作和食の居酒屋です。大きな会社で料理長というポジションを任されていたので、ある程度将来の保証はされていたと思います。ただ、会社の一部上場をきっかけに、私がお客様にしたいと思うサービスができなくなりました。会社が株主を気にするようになり、自分のやっていたこととズレが出てきたのです。店舗ごとに任されている部分もありましたが、他の200店舗でも共通してできるサービスが基本です。本来は料理長が接客をすることはないですけれど、それまで私は料理長の格好をしてフロアに出ることも多くありました。一秒でも早くお客様のもとに美味しい料理を届けたい、お客様のご要望に直接応えたいという強い気持ちがあったからです。そういった会社の変化に悩んでいた時に、飲食店をやっている中学校の同級生から、2号店を出す計画があるという話をされました。一緒にやる人を探しているとも言われて、やれたら楽しいだろうなと思いました。結局半年ぐらい悩みました。けれど、このまま飲食業界でやっていくのであれば、こいつと心中してもいいやと思えるくらいの人と一緒に仕事をして、同じ釜の飯を食べた方がいいと思ったんです。今でも彼がオーナー、私が店長として一緒にやっています。
♢飲食の道に進んだ理由は?
元々、音楽をやりながら飲食店のアルバイトをしていました。人を元気にするのって音楽だったり芸術だったりするじゃないですか。自分のパフォーマンスで観客の人が笑顔になる空間を作ることがすごく好きだったんですね。その感覚って飲食をやっているのと似ているんですよ。でも音楽で成功するのってなかなか難しいことで、自分には成功するための努力や実力がまだ足りないと思っていた時に、飲食という土俵であれば今からでも間に合うかな、誰かの笑顔のために仕事ができるかなと思い、本格的に飲食業界に入りました。そうして入った前の会社は、入社時に店長志望か料理長志望かを選ぶような会社で、私は接客がしたかったので店長志望でした。けれど、料理の知識のない人間がどうやってお客様に料理について伝えるのだろうという疑問もありました。そこで、調理からやらせてほしいと伝えたら、なぜかどっぷり料理長になっていました。
↑ステージで歌う、山口さん
♢個人経営のお店になって、どんな変化がありましたか?
元々持っていたお客様第一優先という想いは昔から揺らいでいないので、やり方は変わっていないですね。前の会社にいた時も、誕生日プレートをお願いされたら、デコレーションしてサプライズするという他店舗ではやっていないこともしていました。お客様は、お店に対しての期待値を持っていると思うんです。こういうお店に頼んだから、こういうものが出てくるであろうっていう。その期待値を超えた時に感動って生まれるんです。前の会社では、クレームが起きないように特別なことはやらないというのが方針でした。そういうのが、私には合いませんでした。少しでも自分にできることがあるのであればしてあげたいというのが我々の仕事だと思っていて。よくうちのアルバイトのスタッフに言うのも、「お客様のもとに料理を届けるまでが君たちの仕事ではない。お客様に料理が届いて、お客様が美味しいと言って初めて、君たちの仕事が終わる。その環境を整えてあげて、お客様が何を求めているのかを汲み取ってあげる。それがサービスである」。本来であれば「すみません」と店員を呼ばせてしまうことすら、サービスを怠っているというのが持論です。難しいことを言っていますけれど、前の会社ですごく厳しいホールの店長に指導を受けていたので、その方の影響を受けていますね。料理のクレームは全てホールの責任だと言っていた店長でした。料理のミスも最後に出した人間が確認できたはずだ。遅いと思っているお客様には、適切なサービストークをすればクレームに繋がらなかったはずだ、とか。そういう教えを受けたのです。やはり出会いは大事だなと思います。そういう方たちと仕事をしてきたから、今がある。それまで独立志望というわけではなかったのですが、こうして自分のやりたいことを形にする場を得られたので、恵まれていると思いますね。
↑オープン当時のめがね食堂でお客様と戯れるオーナーの栂野さん
♢めがね食堂には他にはないメニューがたくさんありますね
うちではカスタムオーダーができます。メニューに書いていないものでも、相談していただければ作ります。しかも、オーナーはイタリアン・フレンチで、私は和食・中華が得意なので、二人いると料理の知識が膨大になるんですよね。うちはビストロとしてやっていますが、例えばお客様から天ぷらが食べたいと言われたら、じゃあ私が作りますってなります。今日のオススメのハマチもそうです。釣りが趣味の友達が13本ハマチを送ってきたんです(笑)いろんな方から支援していただきながら期待に応えていくというのも、個人店ならではですよね。
↑ハマチは照り焼きに加工され、お持ち帰りOKの商品に早変わり!
お店にあるクラフトビールのタップも、8本もそろっているのは実は都内でも2店舗ぐらいしかないんですよ。さらに、クラフトビールの飲み放題もやっています。2時間で2,000円ですけれど、ラストオーダーもきっちり2時間後ですから、お酒を飲まれる方は完全に元をとって帰られますよね。それと、飲み放題はお客様ご自身で注いでいただいています。特に女性のお客様は、8種類全部をちょっとずつ飲みたい方とかも多いですよ。店員がなみなみに注いできてしまうと、8杯も飲めないですから。こちらからしてみると、人件費を取られないですし、一見マイナスに見えて、全体で見た時にプラスになるサービスなんです。
ただ、こだわって仕入れたお酒もお店の売りの一つにしていましたから、緊急事態になって、やっぱりご飯だけ食べてお水を飲んでお帰りになる方が非常に多くなってしまいました。お酒を出せないと、なかなか売り上げの面では厳しいです。なので、ソフトドリンクのメニューを一新して、ノンアルコールカクテルにも力を入れることで選択肢を増やしました。そうしたら、今までお水を飲んでいたお客様が「じゃあ先にこれください」とオーダーしてくださるようになって。お客様一人当たりが使ってくださる金額も増えましたし、そういうことがあればあるほどお客様との会話が増えて、お話しするきっかけにもなりましたね。あと、こういうお店に来た時に、大手企業が出しているノンアルコールビールが出てくると、家でも飲めるじゃんと思ってしまいます。なので、ドイツのノンアルコールビールを取り寄せました。ビールのような味わいがしっかりしますし、パッケージがお洒落ですよね。これならお酒を飲んでいる雰囲気になれるかなと。ドリンクが出ないとお食事メインになるので、どうしても提供が遅くなってしまいますが、瓶タイプでノンアルコールビールを提供すると、お客様同士で「注ぎますよ」みたいな会話が生まれます。そんな風に、少しでもお食事を待つ時間を長く感じさせない努力をしなくてはいけないと思っています。
↑定番はもちもち生パスタ!
↑ランチタイムには、+100円でサラダバーも付いてくる!
↑ドイツのノンアルは本格派?!
♢お客様との距離がすごく近いように感じます
かなり近いですね。でも接客の仕方はお客様によります。話しかけて欲しいなという雰囲気や、逆に嫌だなという雰囲気があって、アイキャッチや何を見て食事をしているかなどでわかるんです。例えば、話が盛り上がっているカップルが来たら、店員はあまり話しかけに行かない方がいいですよね。ただ、同じ二人組でもその関係性によって、第三者が必要かどうかって変わってくることもあります。例えば、上司とご飯を食べに行くことになり、少し気まずいと思いながら食事をすることがあるとします(笑)正直、話よりも料理に集中したいと思うこともありますよね。そういうお客様には、店員が第三者としてお食事について話しに行ったほうがいいかなとか考えます。かつ、上司の方にお話を振ると、上司の方の話す相手が部下の方ではなくてうちのスタッフになるので、部下の方にとってもこの店での思い出が少しプラスになると思うんです。気遣いの仕方って、そのお客様によりますよね。
♢どんなお客様がいらっしゃいますか?
色々な地域でお仕事をさせていただいた経験があります。一番長かったのが吉祥寺で、他にも新大久保・大宮・川崎・二子玉川・阿佐ヶ谷・上野・池袋など。地域性って結構あると思うんですけれど、千代田区の麹町近辺の方々は本当に良い方ばかりです。うちのお店は、常連のお客様方に支えられています。中には「え?こんな安くていいの?」と驚かれることもありますが、良いところの良い食材をギリギリの値段で出していることがほとんどですからね。市ヶ谷は遊びに行こうってなるタイプの街ではないので、リピーターの方が本当に大切なんです。ですから、こういう取材を受けさせていただくことによって、隠れたお店じゃないですけれど、市ヶ谷に来る時の楽しみの一つとして、色々な地元密着系の飲食店が立ち並んでいるということを知っていただけたらいいなと思いますね。コンセントもあるしWi-Fiもあるし、携帯の充電器もお貸し出ししていますよ(笑)ぜひお気軽にお店にいらしていただけたら嬉しいです。(6月3日に取材しました。)
↑店内の壁に描かれている絵は、昔スタッフをしていた武蔵野美術大学の学生さんが書いたもの!
↑お店では、様々なアーティストさんの作品を季節ごとに展示しているんだとか
取材にご協力いただき、ありがとうございました!
【めがね食堂(1号店)】
JR市ヶ谷駅から徒歩3分
千代田区六番町4-11 朝日六番町マンションB102
定休日 日曜・祝日
↑この階段を、地下に降りたところにあります!
Instagram @meganeshokudou_ichigaya