チームプレイを生かして「国際協力×まちづくり」に挑む

チームプレイを生かして「国際協力×まちづくり」に挑む

明治大学 情報コミュニケーション学部 島田ゼミ

島田 剛 准教授

情報コミュニケーション学部 四年生 中山優衣さん

情報コミュニケーション学部 四年生 田口真由さん

今回は、明治大学情報コミュニケーション学部の通称「島田ゼミ」から、島田先生、ゼミ生の中山さん、田口さんに取材させていただきました。

島田ゼミでは、昨年のコロナ禍において、コロンビアで現地の障がい者が作るコーヒー豆を、神保町に本社のある株式会社ミカフェート代表取締役の川島良彰さんにご協力のもと、「明治大学SDGsコーヒー(以下SDGsコーヒー)」として企画し、販売しています。学生たちはフェアトレード商品の開発や販売を通して、国際的な経済のあり方を学んでいます。ちなみに、今年一月に販売を開始して、約一週間で完売したんだとか!(現在は再販中)

また、Think Globally, Act Locally の実践として、キャンパスのある神保町で「神保町コーヒー・プロジェクト」も始動。コーヒーを起点に、学生たちがこれからどのような活動をしていくのか、あるまっぷも大注目です!

島田ゼミはどんなゼミ?

中山さん「島田ゼミは私がちょうど入学した年にできた国際系のゼミです。当時シラバスで見つけた瞬間に、私がやりたいことはこれだと確信して、島田ゼミに入りました。島田ゼミに所属しながら、現地を知るためにカンボジアなどにも行きました。」

田口さん「私が国際協力に興味を持ったきっかけは、中学高校の英語の授業で読んだSDGsに関する長文です。その時から、日本に住む私はとても幸せだけれど、一歩海外に出たら違う状況なのではと考えるようになりました。島田ゼミに入り、二年生の時には環境や教育など色々な角度からケニアについて学びました。三年生から本格的にゼミが始まり、最終的には「SDGsコーヒー」が形として残りました。」

↑ノーベル経済省も受賞したスゴイ方!海外から有名な教授を招いてゲスト講師をしていただくことも

「明治大学SDGsコーヒー」のコンセプトは「いいコーヒーにはいい〇〇」。

皆さんの考える〇〇はなんですか?

田口さん「元々は、貧困の解決には適正価格をつけるのが大事じゃないか、ということで、「いいコーヒーにはいい“値段”」というコンセプトをつけていました。ですが、それだと金額だけの話になってしまうという指摘を先生から受けたんです。じゃあもっといろんな要素を入れるためにはどうしたら良いかと考えていたら、ゼミ生の中のひとりが“〇〇”がいいんじゃない?と言ってくれて。確かにそれならいろんな想いを込められるなと思いました。〇〇に入るのは“環境”だったり、生産者だけでなくて消費者にも嬉しいコーヒーを意識した“味”や“質”だったり。双方ともに豊かな生活が送れるようなコーヒーを発信していきたいなという想いで、このコンセプトにしました。」

中山さん「あとは“関係”ですね。安定した取引価格を定めることで生産者の生活が安定し、消費者も質のいいものを安定して手に入れることができる、こういった形をつくるには、まずは良い関係性が必要不可欠だと思います。実はこれが今の大きな課題です。私たちはまだコロンビアの現地の方にもお会いしたことがないですし、実際にどんな生活をしていて、どんな支援が必要なのかというのがまだわかっていないんです。これからもっと理解を深めて、良い関係づくりをしていきたいですね。」

島田先生「「SDGsコーヒー」の売り上げは現地への支援に使います。お金をどう使うのか、どう支援するのかということを具体的に考えないといけない時期に来ていますね。人を助けるのって難しいですよね。親切の押し付けになってもいけないですし、本当に必要とされていることは何かを深く考えなければいけません。」

中山さん「そうですね。「SDGsコーヒー」が完売して、追加発注できたのは嬉しいびっくりでした。ですが、去年はまさに手探り状態で。私はプロジェクトリーダー、彼女は副リーダーとして携わっていましたが、社会にでたことがない学生が「いい商品を作りたい」となった時に、何が必要かもわからない。何が他のフェアトレード商品と違うのか。フェアとは何かというところから考え始めると、疑問が多すぎて。期限があったので、そこに間に合うようになんとか販売までは漕ぎつけたけれど、当初目標としていた支援内容にはまだ中身が伴ってないので、課題が山積みです。「フェア」な考え方と商品を広めることでこれが当たり前になる足がかりを作っていきたいですね。」

 

「神保町コーヒー・プロジェクト」って?

島田先生「「神保町コーヒー・プロジェクト」は、うちのゼミ生が主体となって神保町からコーヒーの情報を発信し、古書店街だけでなくコーヒーというブランドでも人を集めたいなという想いで、去年始動しました。学生には途上国の問題に取り組むのと同時に、大学の目の前にある街の街づくりにも取り組んでもらいたいと思っています。今はコロナで思うように活動できていないですが、徐々にしていければと思っています。神保町は本の街ですが、電子書籍の需要が高まり、紙の本が売れにくくなっています。私も実家が書店・出版社をしていたのでよくわかります。実はかつて神保町にもお店がありました。課題を抱えているのは海外も国内も同じです。」

 

まちづくりにおける学生の役割とは?

島田先生「今は新しく神保町に来て街のことをあまり知らない新しく来た人たちと、元からいてすごく愛着のある人たちとが街中に共存しています。これからビルの老朽化や高齢化に伴って、外から来た人がどんどん増えていくと考えられます。それでこの街に愛着を持っている人が減ってしまったら、神保町の古本屋街は変わってしまいますよね。学生たちはそのどちらでもないので、両者を引き合わせるマグネットのような存在になるのではないかと思っています。」

中山さん「これからはコーヒーを作るだけではなく、神保町のまちづくりにリアルに関わりたいですね。コーヒーと繋がりの深い喫茶店の取材にも力を入れていきたいです」

 

個性を活かして人気ゼミへ

ゼミの活動で苦労したことはありますか?

中山さん「ずっと試行錯誤の連続だったなと。特に、島田ゼミにはもっと国際系のことをやりたいって人や、まちづくりに力を入れたいという人など、いろいろな視点を持った人がいます。なので、先生が一年間でコーヒーを商品化するプロジェクトどう?と持って来てくださった時に、アプローチの仕方が違うからか全員が全員やりたいとはならなかったのですよね。そういういろんな視点を一つに集約していくということは苦労したかもしれません。あとは、前期はオンラインだったこともあり、一人一人の個性を掴むのが大変でした。一人一人が主役になれるように、各々の得意なことを生かしながら商品につなげていくというのが、リーダーとしては難しかったですね。例えばデザインがうまい人、文章を作るのがうまい人などです。」

島田先生「最終的には個性が活きましたね。オンラインになって、最初はみんな手探りでした。その中で途中からこの二人が全体の要になって進めてくれました。」

中山さん「そうですね。うちの学年、女が強いって言われていて(笑)」

田口さん「でも、ゼミ生が十五人いて良かったなと思います。もし私一人のプロジェクトだったら、こんなにいろんな人の声に寄り添える商品を作ることはできなかったと思います。」

島田先生「去年のゼミ生は二十二人でしたが今年は三十五人になります。だから今年もオンラインになってしまうと、意思疎通がより難しくなりそうですね。」

中山さん「ただ、新規生は初めて島田ゼミに入ったからこそ出てくる疑問を持ってるんですよね。既に一年間学んできたからこそ私たちが盲目になっていることに、なんでそうなるの?と疑問をもつ。多分それが一般の方の声なのですよね。だから、この疑問の答えを出せれば一般の方にも買っていただける商品になる。これがいいよって言える根拠になる。それを強みとして感じています。」

島田先生「みんな多士済々というか。動画作成がすごいうまい学生がいて。」

田口さん「島田ゼミのPR動画とかも作ってくれて。それの影響もあって今年二十人も増えるという結果に繋がったのかも」

島田先生「うちのゼミの人気が出たのは、僕じゃなくて動画のおかげです(笑)」

中山さん「SNS関連を動かしてくれる人もいます。色々助かります。」

↑ゼミを支える多士済々なメンバー

繋いでいく、これからの島田ゼミ

中山さん「私たちはすごく小さな力かもしれないけど、活動の基盤を作れたことは良かったです。四年間ではできないことも多い中で、島田先生が長期的に神保町に携わってくださることで、次の次のってやっていけるので。今後に期待していいですか?(笑)」

島田先生「そうね(笑)コーヒーを作るというのも、実は四年前からあったアイディアなんです。それから二年近く経って、やっと去年商品化したんです。プロジェクトはそうやって時間をかけてつくっていくものですね。」

田口さん「確かに、続いていくっていいですね。二年前の想いが私たちの代で形になって。で、私たちが今思っていることが二年後には形になっているかもしれないと思うと、面白いなと思いますね。」

 

お二人の卒業後は?

中山さん「デジタルマーケティングの会社に就職します。人に伝えるには、自分が発信できる場にいないとできないと痛感したので。あとはコロナもあって、デジタルの強みや影響力の大きさ、可能性を感じました。」

田口さん「私は、主に介護業界の課題解決をしている会社に就職します。経営が困難な会社を引き上げるようなことをやっていて、今後は介護以外の業界にも関わっていく会社です。」

中山さん「当初は、国際支援に携わることを目標にしていましたが、社会問題への関わり方が変わっただけだと思います。」

田口さん「そうですね。社会課題への問題意識があるので、それが国外だろうと国内だろうと本質は変わらないかなと。将来は日本で介護の仕組みを作って海外に発信とかしたいなって今は思っています。世界は繋がっていて、切っても切れない関係だなと」

先生「ゼミって学生のためだけのものではなくって、卒業してからもみんなで作っていくものです。帰ってくるのはウェルカムですからね。OBとして、ぜひ参加してください」

取材にご協力いただき、ありがとうございました!

神保町コーヒープロジェクトについては、こちらから↓

https://jimbocho-coffee.com/