パン職人、パティシエ料理人が三位一体となるベーカリー工房 CRISTA(クリスタ)


クリスタさんは、パン・洋菓子・料理の匠が各専門的な技術を活かし、パン=料理を表現した商品作りをしているベーカリー工房。
今回はマネージャーの伊賀さんに取材させていただきました。

新しい価値観のパンを生み出す店。

私、伊賀 新はパティシエの経験が長いのですが、クリスタには凄腕のブーランジェ(パン職人)がいますので「こういう味の菓子パンを作りたいんだけど」と言ったら「じゃあそれに合う生地は何だろう」という感じで試してみたり、お菓子で使うチョコレートを入れてみたり、ブーランジェ・パティシエ・料理人が専門分野の技術や知恵を出し合う三位一体となった商品づくりをしています。お店のコンセプトが普通のパンとは違うので、パティシエの視点なら理想のものをつくれるのではということで、ちょうど1年前くらいから私がこのお店のマネージャーを任されています。

マネージャー・シェフパティシエ 伊賀 新さん

 

―商品のアイディアはどう出していますか?
クリスタのパンは、スタッフ全員のアイデアを形にしたものです。
ほぼ毎月新商品を発売するのですが、それぞれの専門スキルを身に着けている者がいるので、こういうものが作りたいといって形になるのは早いです。
あとは特に重要なのは見た目ですね。
見た目にお菓子の繊細さなども楽しんでいただける仕上がりにしています。
一方で調理パンというのは難しく、同じようなコンセプトの商品を作ろうとしたら、やはり料理の技術や知識が必要となってきます。
当店のサンドイッチのソースなどは、全てフレンチのシェフのレシピを土台に作っていて、今はそこからさらに「時代に合ったもの」を生み出すべく料理研究家の女性
と共に開発しています。
例えば今の「ランチBOX」もすごく断面が綺麗ですよね。
思わず写真に撮りたくなるようなものを意識しています。
挟む順番だけで見た目が全く変わってくるんです。
また、「シェフ自家製欧風カレーパン」はフルーツチャツネやリンゴを隠し味にスパイスからカレー粉を自家製しており、1時間以上かけて煮込んでいます。
秋からはデミグラスソースをたっぷりと使用した「デミグラスカレーパン」も新発売します。
そういうところに力を入れているお店です。

「ランチBOX」月替わりのサンドイッチとスープ、プチおやつのセット商品

「シェフ自家製欧風カレーパン」

基本にこだわり、毎日の生活を彩るパン。

―時代に敏感でありたい。
そうですね。特に商品開発をやっていて思うのは、いま何が巷で話題なのか、どういったものを世の人は求めているのかといったことです。
見た目や味はもちろんですが、今は写真を撮りたくなるようなものなど、そういった視点で商品開発をしています。
ただ、その中で当店が一番重要にしているのが「食パン」などの「食事パン」、クロワッサンなどの「テーブルパン」です。
朝・昼・晩の食事と一緒に食べてもらえるパンは、お客さまの生活の一部になります。
やはりそこの土台がしっかりとしていないと美味しいものはできないと思っています。

―嬉しかった、お客様からの言葉は?
私が一番嬉しかったのは「濃厚卵と金ごまのシュークリーム」を発売しはじめた時に、「すごく素材にこだわっている感じが伝わってきて、美味しかったです」という言葉です。
まさにこだわっているところを感じ取っていただけた一言でした。
このシュークリームは生地とクリームの両方をすごくこだわって作っていて、卵は徳島県の濃密卵を100%シュー生地に使っていて、表面のカリカリしたチュイール(クッキー)には、厳選した地中海産の金ゴマを入れてゴマの香ばしさを加えるという工夫をしています。
クリームは赤卵の卵黄と北海道産純生クリームを使っているのですごく濃厚な味わいです。

 

―スタッフの方はどんな想いで入社されますか?
必ずクリスタのコンセプトと目指しているもの、求められるものを全部話したうえで、アルバイト、社員問わずみなさん入社を決めています。
なのでみんな同じ想いで一緒に仕事をしています。
土日が休みのパン屋って、ほとんどないんですよね。
クリスタは土地柄がオフィス街なので珍しいのですが、土日が休みという待遇は、仕事をする方にしては良い待遇で、求人をだすと有難いことにたくさん応募が来るんです。
そういう意味でも、時代に合っているのかもしれません。
私なんかは修行時代は朝から晩まで休みが週1日でも、とにかく自分の技術を身に着けるということだけを考えていました。
けれど、人がどんどん辞めたり入ったりで、なかなか長続きしないんです。
価値観とライフスタイルは人それぞれなので。
労働時間が多すぎてしまったり、技術を教える中でピリピリしたような空気が生まれてしまうような環境にはあまりしないようにしています。
教える時は段階的に習得してもらって、技術を伝えていきます。
若いスタッフが多いということもありますし、一つ一つ取り組ませています。
教える人も決まったスケジュールで習得できるように予定を組んで教えて、教わる方は一日でも早く習得して、一日でも早く次のステップに進めるようにしています。
クリスタは「パンを作りたくて」とか「パティシエなんです」と入社しても、その仕事しかしないということはないんですよ。
パティシエであろうと、パン職人であろうと、うちの料理もパンもお菓子作りも全部含めてクリスタの仕事なので、全部やってもらいますと皆に言っています。
どうしてそれをやるかというと、色んなことができるスタッフが増えれば増えるほど、仕事をどんどんシェアして、足りない部分を誰かが補えて労働時間も短縮できるし、誰かが欠員してもカバーできます。
それに加えてとても重要な販売という業務もあるので、製造スタッフにもヘルプで販売にでてもらうようにしています。
それは直にお客様の声を聞き、動きを見ることができるので。

―こういった運営スタイルは伊賀さんの今までの経験からくるものなのですか?
もちろん基準は会社です。ただ教え方や厨房の雰囲気、労働時間など、私が今までの経験を通して思うことを取り入れてています。
あとは実際にやってみて気付いたこともたくさんありますし、スタッフ一人一人の声を聴き、一つ一つ仕組みをつくっているんです。

―色んな工程を楽しそうに説明する伊賀さんからはこの仕事が大好きなんだというのが伝わってきます。
作るのはもちろん好きなのですが、いまはマネージャーとしてお客さまへお店のことを伝えることが大事だと思っています。
新しい商品を出したらどうしたら注目してもらえるのか、色々試行錯誤しています。
試食を置いたり、商品の置き方などを工夫したり。
パティシエでありながらパンやサンドイッチなど全商品がどういうことにこだわっているか、私はわかっていて。
それを一つ一つ全部伝えたいです。
普段、お店に商品が並んでいるだけでは伝えられないので、色んな手段を使って伝えたいと思います。
もっと食べていただきたいし、もっと美味しいと思っていただきたいです。
安定した商品をつくることは技術的な面でも難しいですし、環境にも左右されてしまうのがモノづくりです。
全部門をチェックして、いつもと違うと思えば、それはお客様の前には出ないようにしています。
それは、やはりお客様が一番大切だからです。

クリスタの純生食パン、お店の顔となった「だし巻きサンド」

いま、食パン専門店がたくさんできるくらい、食パンブームなんです。
食パンの凄いところは、日々の食事に浸透しているという点です。
当店も会社帰りに食パンを買って帰る男性が多いです。
「うちの子どもがこれ好きなんです」って言ってくださる常連さんもいらっしゃいます。
クリスタには現在3種類の食パンがありますが、その中で一番人気があるのが「麹町純生食パン」です。
タイプとしてはいわゆる「生食パン」です。
何が生かというと、トーストせずにそのまま食べてもしっとりとしていて美味しく食べられる。
耳が柔らかくて、ほんのり甘みがある。キメが細かくて繊細なので舌ざわりがすごく良いんです。
しっとりして耳まで柔らかいのは、ヨーグルト酵母を使っているからなんです。
また、生地には私が選んだ北海道産の純生クリームを練りこんでいます。その生クリームはお菓子で使うようなもので、パンに練り込むことでまろやかな甘みがでます。
麹町純生食パンは、そのまま召し上がっていただくのはもちろん美味しいですし、2日目、3日目はトーストしてお召し上がりいただいてもまた違う味わい方ができます。
特にサンドイッチにすると、しっとりしてモサモサせずに食べられるので、サンドイッチ用にスライスを注文してくださる方もいっぱいいます。
お店では厚焼にしただし巻き玉子を純生食パンで挟んだ「厚焼きだし巻サンド」を販売しています。だし巻き玉子も手作りなので一日数量限定ですが、クリスタのコンセプトを体現している顔となる商品ですね。
よく「だし巻きサンドのお店よね」と言ってくださる方もいらっしゃいます。

―最後に、あるまっぷの読者の方へメッセージをお願いします。
私たちクリスタは、この地域に根付いたお店になることをオープンの頃からずっと目指しています。
小さなお店なので、お客様の声に常に耳を傾けて、そこに求められる商品づくりができるように日々進化し、お客様のライフスタイルの一部のようなお店になれるようにスタッフ一丸となって頑張っています。
そういうことを商品を通してぜひ感じていただけたらと思います。

CRISTA(クリスタ)
千代田区麹町4丁目1−5 麹町志村ビル 1F
営業時間 月~金 8:00-20:00
定休日  土日祝
電話番号 03-6261-1172